静岡道楽日記

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砂の王国@荻原浩

ゆる~い宗教考② 直木賞候補作・砂の王国の別の読み方

文学界の2大賞といえば純文学の芥川賞と大衆小説の直木賞です。今回の直木賞の候補作に私の好きな荻原浩さんの「砂の王国」がありました。晴れの受賞となっていればもっと騒がれていたのでしょうが、それでも上下巻で800ページの大作はなかなかの力作でした。

砂の王国@荻原浩

この砂の王国、いわゆる新興宗教を題材にしたものです。あらすじ的には大手証券会社を辞めてホームレスになった主人公が怪しい辻占い師と組んで、得体がしれないがどこか魅力があるイケメンのホームレス・ナカムラを教祖に仕立てて金儲けのために新興宗教を作り上げていく・・・という話です。

このような話では篠田節子さんの「仮想儀礼」という名著、快著がありますが、それとはテイストが違うものの根っこの部分ではどこか共通しいるように思います。現代にいきる多くの人が将来に抱える不安心理を上手に突いてくる誘惑や怪しい誘い、新興宗教や、どこにでもいる一般市民がイコンとしてのアイドル(偶像)を求める姿が描かれています。

と、メインテーマ自体もなかなかのものですが、私はそれ以外の小技がとてもおもしく読むことができました。辻占い師の鋭い観察眼により相談者の悩みを聞きだしていくコールドリーディングのテクニックや、主人公が前職を生かして、宗教団体をいかにして大きくさせていくかをこと細かく計画して実行していくか・・・などなど、宗教というよりも起業やマーケティングに生かせるような方法や手法が出てくるのです。経済学論的には行動経済学になるのでしょうか。

このようなことが可能なのも著者の荻原さんが広告代理店でコピーライターとしてバリバリ活躍していたからでしょう。人を惹きつけるテクニックと心理戦に関してはプロですからねぇ。私としてはこの本は現代における宗教や心の問題とともに、いかに戦略を考えて起業して大きくしていくかについてのヒントを与えてくれているように思いました。ネットで検索してもビジネスや心理学に関心のある人は、この点により高く評価していました。

ということで、新興宗教について興味のある人はもちろんのこと、これから起業したい人、会社を大きくしたい人、営業職の人は読んでみてもいいかもしれませんよぉ。



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流@東山彰良(2017-08-01 21:19)

この記事へのコメント :
今日この本を図書館で見つけたので借りてきました。
本屋だと陳列や帯にひかれて買ったり立ち読みしたりしますが、
図書館の場合自分で明確に借りたい本が決まっているか
歩きながらピンとくるものを探すしかないですからね。
Posted by じゅんこじゅんこ at 2011年04月20日 20:16
じゅんこさん、こんにちは。砂の王国、お気に入りになるといいのですが・・・。

最近の図書館はネットから予約できたり、借り出し状況がわかったり本当に便利ですね。これからのGWは休みがたくさんありますから、のんびりと本を読むなんていいですね。
Posted by SUZY(メンカタ)SUZY(メンカタ) at 2011年04月21日 05:24
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